『WHOLE: 完全な健康とバランスのための食事とライフスタイル』

キャンベル博士は、長年にわたり栄養学の研究を行っており、彼の著書はその長年の研究と洞察を基にしています。彼は、食事が私たちの健康と病気に与える影響を深く理解しており、一般的な栄養学の常識を覆す革新的な考え方を提唱しています。

本書では、「WHOLE：全体主義的な視点」を強調しています。つまり、健康を追求する際には食事だけでなく、生活全体の要素を考慮する必要があるという考え方です。彼は、食事が健康に与える影響があらゆる健康問題に関連していると主張しています。

　この本では、免疫系、心臓病、がん、糖尿病など、多くの慢性疾患が食事とライフスタイルにどのように関連しているかが詳細に説明されています。キャンベル博士は、多くの疾患は主に西洋型の食事や生活習慣に起因すると指摘し、その一方で適切な食事やライフスタイルが疾患の予防や改善にどれほど効果的であるかを論じています。

　『WHOLE』では、プラントベースの食事が健康に与える多くの利点に焦点を当てています。キャンベル博士は、動物性食品の消費を減らし、野菜、果物、穀物、豆類などのプラントベースの食品を積極的に摂取することで、様々な健康上のメリットが得られると主張しています。また、適切なバランスの取れた食事と共に適度な運動、ストレス管理、良質な睡眠など、ライフスタイル全般にわたる健康の重要性も説かれています。

　また、WHOLEは「食べ物をできるだけ丸ごと摂取する」という考え方のキーワードでもあります。このアプローチは、食べ物を加工や精製された形ではなく、そのままの状態で摂取することが健康に良いという考え方を指します。

キャンベル博士は、食べ物を丸ごと摂取することで得られる栄養素や健康効果について以下のようなポイントを示しています：

１．栄養素の豊富さ: 食品を加工したり精製すると、本来含まれていた栄養素が失われることがあります。例えば、果物や野菜をジュースにすると食物繊維が減少し、栄養価も低下します。丸ごとの食品を摂取することで、その食品が本来持っていた栄養素を最大限に摂取できます。

２．食物繊維の重要性: キャンベル博士は食物繊維の重要性を強調しています。食物繊維は消化器官の健康をサポートし、便通を良くするだけでなく、血糖値やコレステロール値を安定させる効果もあります。食品を丸ごと摂取することで、この重要な栄養素を十分に摂取できます。

３．フィトケミカルの活性化: 食品にはフィトケミカルと呼ばれる植物由来の化合物が含まれています。これらの化合物は抗酸化作用や抗炎症作用を持ち、健康をサポートする働きがあります。食品を丸ごと摂取することで、これらのフィトケミカルを効果的に取り入れることができます。

４．加工食品のリスク回避: 加工食品や人工的に作られた食品には、添加物や過剰な塩分・糖分が含まれることがあります。これらの食品は健康に悪影響を与えるリスクが高いため、できるだけ自然な形で食品を摂取することが望ましいとされています。

　食べ物を丸ごと摂取することが健康を維持し、病気を予防するために重要であるという理論的なバックグラウンドと、具体的な食事の提案が詳細に解説されています。食品の質と摂取方法が健康に与える影響を理解し、日常の食事に取り入れることで、より健康的な生活を送る手助けとなるでしょう。

フィトケミカル（phytochemicals）は植物に自然に含まれる化学物質であり、植物の色や香り、味などに影響を与える成分です。これらの化学物質は、植物が自らを守るためや環境との相互作用に役立っていますが、人間が摂取すると健康に多くの利益をもたらすことが知られています。

フィトケミカルは栄養素（たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル）とは異なる非栄養素ですが、健康に対する様々なプラスの影響があります。以下にフィトケミカルの主な特徴や効果を示します：

１．抗酸化作用: フィトケミカルには強力な抗酸化作用があり、体内の活性酸素種（フリーラジカル）と戦って細胞を保護します。これにより、老化や慢性疾患のリスクが低下する可能性があります。

２．抗炎症作用: 多くのフィトケミカルは抗炎症作用を持ち、炎症反応を抑制することで疾患の予防や改善に役立ちます。炎症は慢性疾患の発症に関与する重要な要因です。

３．免疫機能の向上: サポートされた免疫機能は健康を維持するために重要です。一部のフィトケミカルは免疫システムを強化し、感染や病気から身を守る役割を果たします。

４．がん予防: 特定のフィトケミカルは抗癌作用があり、がん細胞の成長を抑制することが示されています。特に、色素の濃い野菜や果物に多く含まれるカロテノイドやフラボノイドなどがその例です。

５．心血管疾患のリスク低下: フィトケミカルは血管の健康を促進し、心臓病や脳卒中などの心血管疾患のリスクを低下させることが示唆されています。

一般的なフィトケミカルには、ポリフェノール、フラボノイド、カロテノイド、イソフラボン、グルコシノレートなどが含まれます。これらの化合物は、主に野菜、果物、穀物、豆類、ナッツ、種子などの植物性食品に豊富に含まれています。

食事から多様な植物性食品を摂取することで、様々な種類のフィトケミカルを効果的に取り入れることができます。健康的で多様な食事パターンは、フィトケミカルの摂取量を増やし、疾患予防や健康促進に役立ちます。

　ここで大事なことは、ポリフェノールがいいんだ・フラボノイドを摂ろう、などと考えることではなく、昔から食してきた多様な植物性食品には、私たち人間が調べつくしていない多様な有用成分や絶妙な成分バランスがあることに思いを馳せることではないでしょうか。植物性・動物性に関わらず、食物には命があり、命を頂くという想いで「いただきます」と唱えてきたと思います。自然の恵み・命・エネルギー・波動、　どんな言葉を使うにしても、畏敬の念と感謝をもって、「食べ物をできるだけ丸ごと摂取する」よう心がけたいと思います。